オーナー企業経営者のもとで実施される人事採用や昇進人事の裏側

オーナー企業経営者のもとで実施される人事採用や昇進人事の裏側

大学の就職課や、民間の就職予備校といったところでは、新卒での就職活動を目指す学生さんに対して、さまざまな言い方で採用内々定を獲得するためのノウハウを伝えていると思います。例えば、靴をきれいに磨いておくとか、リクルートスーツは無難に黒色が良いとか、採用面接のときには相手の眼をしっかり見て話すべきとか、いろいろあると思います。

しかし、人事採用業務の担当者から見れば、それらの要素は実はあまり重視はされてはいないのです。とくにオーナー社長が経営している企業で、人事採用を行っている人間の立場としては、人を採用する基準は明確です。

具体的には、会社や社長に対して忠誠心を強く持つタイプの人物か否かは、有力な採用基準となります。これは、オーナー社長の立場から考えると「社員は自分の指示通りに仕事をすれば良いのだ」ということや「自分に対して反旗を翻さないこと」を重視しているということです。

このため新卒採用においては、体育会系の学生を優先して採用しています。体育会系の学生は、学生時代から上下関係の厳しさに馴染んでおり、先輩学生からの理不尽な命令にも素直に従っているからです。

会社の内部や、取引先との関係では、頻繁に理不尽なことが発生します。また、オーナー社長や上司からも理不尽な命令や、理不尽な対応をされることがあります。これらのことに、いちいち不平不満を抱くような人間を採用するわけにはいかないのです。

また、女性社員を採用するさいには、外見を重視します。社長によっては、スタイルが良かったり、顔が美形である以外に、胸のサイズが大きいことを採用の条件として挙げるケースもあります。

これは、社長の女性社員採用の考え方として、必ずしも、自分の好みのタイプの女性を雇用したいという考えだけではありません。顔が美形で、胸が大きく、スタイルの良い女性社員が社内に多くいれば、それだけ男性社員たちは仕事に張り合いがでます。朝から夕方まで外回りの営業をしても、会社に戻れば美形でスタイルの良い女性社員が待っているのです。このため、会社の営業成績向上という観点で、美形でさらにスタイルの良い女性が採用されやすいのです。

実際、人材採用においては、男性よりも女性を書類選考で多めに合格させます。スタイルの良さや、顔が美形か否かは実際に会ってみないとわからないためです。リクルートスーツを着ていても、胸の大きい女性の場合は、大きいことがわかります。逆に、胸のサイズが小さい女性の場合は、リクルートスーツを着ているときは、まったく胸の膨らみを感じることはありません。このため、胸のサイズが小さいと判断できたら、面接官は書類にバツ印をつけます。一方、胸のサイズが大きくスタイルも良いと判断できれば合格とします。

また、採用対象が男性でも女性であっても、採用基準としては明るい性格であることが求められます。声が大きいことも重要です。そして、くよくよしない性格であることが必要です。

理由は単純です。暗い性格であったり、声の小さい社員や、些細なことでくよくよする性格の社員は、物事を悪い方向へ捉える傾向が強いのです。そのため他の社員へも、悪い影響を及ぼしてしまいます。そして、その結果会社全体の業績や新商品開発など、あらゆる方向へ悪影響が及ぶ可能性さえ考えられます。このため暗い性格の人物を採用するわけにはいかないのです。

一方、明るい性格の社員は、会社が苦境に陥ったとしても前向きに物事を考えてくれます。なんとかして営業成績を向上させようと奮闘してくれますし、毎日のように新しいビジネスアイデアを提案してくれます。あるいは、会社の経営状態が悪いときには積極的に同僚と夜居酒屋に行き、決起集会と称して気持ちを鼓舞するようなことさえしてくれます。会社というものは生き物ですから、経営状態が良いときがあれば、悪いときもあります。悪い状態に陥ったときに、会社を救ってくれるのは、明るい性格を持った社員であることを経営者は本能的に理解しているのです。

そして、オーナー社長が経営している企業における昇進人事には、表向きの理由と、本当の理由の二通りの理由が存在します。表向きの昇進の理由としては、ほとんどのケースが「目覚ましい業績」や「他の社員からの人望が厚い」などが挙げられます。しかし、オーナー社長にとって、社員を昇進させるということは、その社員に一定の権限と、部下を与えることを意味します。したがって、社員を昇進させる条件としては、その社員が、社長である自分に反旗を翻さない人間であることが絶対条件となっています。一言でいえば、社長に対して絶対的な忠誠心を抱いているか否かを何度もテストして、それをクリアしてきた社員が昇進させてもらえるのです。

このため、オーナー社長である経営者は、自分の側近といえる立場の社員に命じて、すべての社員の動向を記録させ、報告させています。社員が、少しでも会社の経営や待遇について不満を述べれば、直ちに社長へ報告されます。

社長がとくに警戒するケースは、社長自身についての悪口を他の社員へ言い触らしている社員の存在です。あまりに頻繁に社長の悪口を言い触らしているようであれば、社長はその社員の上司に命じて、その社員を退職に追い込みます。手順としては、上司が頻繁にその社員と面談します。そして「キミが活躍する場所は他にもあるのではないか」といった口調でその社員に対して、暗に退職勧告を行うのです。すると、たいていの社長や会社に対して不満を抱く社員は、会社を辞めていきます。

なお、オーナー社長が社員に忠誠心を試すテストとしては、東京にある本社から地方の営業所や支店へ異動させる方法があります。この人事異動で腐ってしまう社員は、社長から抜擢される可能性は低いです。一方、この人事異動でも腐ることなく、歯を食いしばって営業成績をあげた社員については、再び本社に戻したうえで管理職に昇進させるのです。すると、たいていの社員は「一度左遷された自分を社長は評価してくれた」と感激してしまい、社長への忠誠心を強める傾向があるのです。

このような形で管理職や、部長や執行役員といった幹部職に登用された社員たちが、オーナー社長を守る壁となっていくのです。採用においても、昇進においても能力評価とは異なる基準が重視される傾向があります。しかし、そもそも人間の能力には大差がないのだと、オーナー社長は考える傾向が強いのです。